- おもいで岬
- 嫁に来ないか
- ヘッドライト
- 北挽歌
- 帰ってきたよ
- 口笛の港
- 黒潮列車
- ごめんよ
- 青春想譜
- さすらい派
- 待たせたね
- 酒とふたりづれ
- 旅先の雨に
- 情け川
- 男のやせがまん
- 雪の宿
- 津軽恋女
- なごり雪…イルカ
- 季節の中で…松山千春
- 心もよう…井上陽水
- 岬めぐり…山本コータロー
- つむじ風…アリス
- 青葉城恋歌…さとう宗幸
- かざぐるま…松山千春
- 知らず知らずのうちに…ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
- 妹…かぐや姫
- ジョニーの子守唄…アリス
- 襟裳岬…吉田拓郎
- 風…シューベルツ
- 裏切り者の旅…ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
- 遠くへ行きたい…永六輔
- ワインカラーのときめき…新井満
- 大阪しぐれ…都はるみ
- 心のこり…細川たかし
- 釜山港へ帰れ…チョー・ヨンピル
- まわり道…琴風豪規
- 昔の名前で出ています…小林旭
- 中の島ブルース…クールファイブ
- 夢芝居…梅沢富美男
- みれん酒…冠二郎
- 舟唄…八代亜紀
- 新宿・みなと町…森進一
- 時の流れに身をまかせ…テレサ・テン
- すきま風…杉良太郎
- あずさ2号…狩人
- 熱き心に…小林旭
- 放かされて…木下結子
- 浮草情話…森若里子
- みちづれ…牧村三枝子
- 北を恋うる歌…新沼謙治
- 白い花の咲く頃…岡本敦郎
- 大雪よ…新沼謙治
- 雪國…吉幾三
- 津軽海峡・冬景色…石川さゆり
- 愛妻 北挽歌…新沼謙治
- 北国の春…千昌夫
- おやじの海…村木賢吉
- 古里はいいもんだ……新沼謙治
- 千曲川…五木ひろし
- 左官職人こね太郎…新沼謙治
- 三陸・大船渡…新沼謙治
- 帰ってこいよ…松村和子
- 厚田村…新沼謙治
- 奥飛騨慕情…竜鉄也
- 与作…北島三郎
- ふるさとは今もかわらずシンフォニックVer.…新沼謙治
- 男の純情
- 東京ラプソディー
- 酒は涙か溜息か
- 緑の地平線
- 青春日記
- 誰か故郷を想わざる
- 人生の並木路
- 新妻鏡
- なつかしの歌声
- 湯の町エレジー
- 青い背広で
- サーカスの唄
- 丘を越えて
- 影を慕いて
『スター誕生!』でデビューのチャンスをつかみ、一躍スターとなって42年。
ヒット曲の数々、名曲のカバー、話題の『ふるさとは今もかわらず』など、ファン待望の『新沼謙治名曲を唄う BEST80songs』がようやく完成。
このリリースを記念して、新沼さん本人にこれまでの足跡をお伺いしました。
■昭和51年『おもいで岬』でデビュー、続くシングル第2弾『嫁に来ないか』の大ヒットで、瞬く間にスターの仲間入りとなりました。
「実感はなかったですね。いきなりズブの素人がプロになったから、スタッフに支えられて、やりながら成長していった感じですよね」
■当時は黄色い声援も飛び交い、アイドルのようでしたよね。
「4曲目のシングル『ヘッドライト』は、制作陣がそのあたりを意識したんでしょうね。モテる男のかっこいい歌で。やさしいだけの男ではない、強いだけでもない、女性はほら、そうやって揺さぶらないとホロリと来ないから(笑)」
■順調にヒットを重ねる一方、隣の芝生が青く見えた時期もあったそうで……。
「もともとロックが大好きなんです。当時は、まるで洋楽のようなジュリーや西城秀樹さんのサウンドがうらやましかったですね。でもある時、千昌夫さんに “おまえには青春の歌があるからいいよな。オレは若い頃から大人の歌ばっかりだ”と言われたんですよ。確かに自分には『黒潮列車』のような歌もあり、本当は恵まれていたんだと気がついたんです。女房が好きだった『酒とふたりづれ』や、『津軽恋女』なんて本当にいい歌ですよね。聴いた瞬間、これはヒットすると確信したくらいですから」
■そんな中、小椋佳さんが作られた『旅先の雨に』は挑戦だったのでは。
「新沼謙治という枠から出た一曲でした。枠の中に納まるのが嫌いな性格なので、ここぞとばかりに小椋さんにいろいろ希望を伝えたら、“世間の新沼謙治のイメージもあるから、枠を出たいなら、ファンから変えないといけないよね(笑)”って言われたのを思い出しますね」
■枠にとらわれないということでは、ニューミュージックやフォークのカバーは、聴く方も新鮮でしたし、新沼さんも伸び伸びと唄われてますよね。
「ファンの方にもそう言われるんですよ(笑) 伸び伸び、生き生きしているね、意外にこういう歌もイケるんだねと。カバーはヒット曲のほうが、すでに歌の輪郭が入っているから唄いやすいし、聴く人も受け入れやすいでしょう。何を唄うにしてもそうですが、楽しく、軽やかに聴こえること、何より唄う方も聴く方も心地いいことが大切だと思っています。住まいも飲み屋も居心地がいいところに人は集まる。音楽も同じですよね」
■新沼さんにはふるさとをテーマにした歌が数多くありますが、ご自身で作詞作曲を手掛けた『ふるさとは今もかわらず』は、特別な一曲になりました。
「最初は母校である岩手県大船渡市立第一中学校の創立50周年式典での講演を依頼されて、最後に子どもたちと一緒に唄える歌を作りたいと思っていたんです。そこへ東日本大震災が来て、講演自体が一年遅れたんですよ」
■この年は新沼さんにとって、奥様の博江さんがガンのため62歳の若さで亡くなるという、辛い別れもありました。
「震災があり、彼女の旅立ちもあり、だからこの歌が書けたんですよね。そういう時でないと見えないもの、聞こえてこないものもあるのでしょう。それにふるさとに帰ったことで、生まれた時と同じように、五感が研ぎ澄まされたのかな。見慣れた小川のほとりを歩いて、ふるさとの景色や香りを感じただけで、ワンコーラス目がすらすらと出てきましたから」
■合唱曲になったのはなぜですか?
「もともと子どもたちと唄うつもりだったので合唱用にしたいと思い、長崎の知り合いにコーラス用の譜面をお願いしたことから長崎市立岩屋中学校や、杉並児童合唱団にもコーラスに参加してもらおうと、どんどん話は広がり、母校の子どもたちも加えた、総勢44名の中学生に唄ってもらう形になりました」
■今では復興ソングとして、全国各地で唄われています。
「この歌には悲しい詞はひとつもないのに、みんなこの歌を聴くと泣くんですよね。以前、『スター誕生!』の審査員だった阿久悠さんに“あなたの歌は気持ちよく悲しく聞こえる”と言われたので、僕自身がそういうものを持っているのかもしれないけど、涙が出るのは悲しい時だけではないでしょう。この歌の場合は、子どもたちのすがすがしい声とハーモニー、見事なピアノのアレンジ。聴いていて心が癒やされるから、涙が流れるんじゃないかな」
■『NHK歌謡コンサート』で唄った時は、反響がすごかったそうですね。
「誰が作ったのか、なんという歌なのかと、問い合わせが殺到したそうです。番組の方からも“ぜひ再演を”と言われ、全国の学校や合唱団からは譜面が欲しいとの要望もあって、少しは人の役に立てたのかなとうれしかったですね」
■新沼さんといえば、コンサートで古賀政男先生の曲を弾き語りしていることも、ファンの間では有名ですよね。
「古賀メロディは最高ですよ。子どもの頃からどれだけ聴いてきたかわからないのに、今もなお聴きたくなるんです。『影を慕いて』は、ギターでよく練習してました。コンサートでは自分でギターを弾いて唄っていますが、古賀先生のファンは僕より年上の方も多くて、長い間古賀メロディを聴いているから、音のひとつひとつまでインプットされている。そういう人たちの前で間違うわけにはいかないので、ギターの練習は欠かせません。その代り成功した時の拍手はすごいですから、練習のし甲斐がありますね。自分がこの年齢になったからかもしれませんが、歌を愛する1人として、後輩として、こういう素晴らしい曲を次世代へと伝えていくという使命もあると思っています」
■今回のCDボックスは、そんな新沼さんの足跡がわかる5枚組なんですね。
「今回は約40年の一括り。僕の汗と涙と努力の結晶なので、ぜひ楽しんでもらいたいですね。今後はまだやっていないこと、時にはギター1本で、時にはいろんな方とコラボしたり、海外でも唄ってみたい。やりたいことはどんどん変わっていくと思いますが、その変わっていく過程も楽しみながら、聴いた人が元気になれるケンちゃんサウンドを作っていきたいですね」
文・構成:北井優子
新沼謙治 PROFILE
日本テレビのオーディション番組『スター誕生!』をきっかけに、昭和51年『おもいで岬』でデビュー。シングル第2弾『嫁に来ないか』が大ヒットし、数々の新人賞を受賞。
『NHK紅白歌合戦』にも初出場を果たし、以後、平成2年まで通算13回出場。『ヘッドライト』『酒とふたりづれ』『津軽恋女』など、ヒット曲多数。
平成25年『ふるさとは今もかわらず』が反響を呼び、合唱バージョンやシンフォニックバージョンを再リリース。
平成29年4月に最新シングル『たろうの初恋』を、8月には『新沼謙治名曲を唄う BEST80songs』をリリース