- 影を慕いて
- 月の浜辺
- 無法松の一生<度胸千両入り>
- 男の純情*
- 酒は涙か溜息か
- 青い背広で
- 東京ラプソディ
- 湯の町エレジー
- 新妻鏡
- 四月の或る日*
- 青春日記*
- 恋の曼珠沙華*
- 南の花嫁さん*
- 赤い靴のタンゴ*
- 月のヴェランダ
- ゲイシャ・ワルツ
- トンコ節*
- なつかしのヴエノスアイレス
- 誰か故郷を想わざる
- 丘を越えて
- リンゴ追分
- 悲しき口笛
- みだれ髪
- 港町十三番地
- 白いランチで十四ノット
- ひばりの船長さん
- 波止場だよお父つぁん
- ひばりの渡り鳥だよ
- むらさきの夜明け*
- 柔
- 越後獅子の唄
- ポトマックの桜
- 三百六十五夜*
- 哀愁波止場
- 真赤な太陽
- 東京キッド
- お祭りマンボ
- 愛燦燦(あいさんさん)
- 川の流れのように
- 悲しい酒
- 別れの一本杉
- なみだ船
- 学園広場*
- 早く帰ってコ
- 王将*
- 東京の人さようなら
- 忘れないさ*
- 恋は神代の昔から
- アイレ可愛や*
- 夜が笑っている*
- 私の好きなもの*
- あの人の足音*
- 恋のしずく
- ほれているのに
- おもいで*
- 逢いたくて逢いたくて
- ローマの雨*
- 信じていたい*
- 愛の渚*
- つれてって*
- 夜霧よ今夜も有難う
- 霧の摩周湖
- 世界は二人のために
- 赤坂の夜は更けて
- ウナ・セラ・ディ東京
- 亜麻色の髪の乙女
- 恋しくて*
- ゆうべの秘密
- ワン・レイニー・ナイト・イン・トウキョウ
- アデュー東京*
- 恋*
- 盛り場ブルース*
- 銀座ブルース
- 小指の想い出
- 恋のときめき*
- 愛の終りに
- 想い出の京都*
- 夜明けの歌
- 命かれても*
- 長崎は今日も雨だった
- 荒城の月
- さくらさくら
- 雪のふる街を*
- 夏の思い出
- 浜辺の歌
- 中国地方の子守歌
- 七つの子*
- 叱られて
- 宵待草*
- ふるさと
- 夕やけこやけ
- おぼろ月夜
- 故郷を離るる歌*
- 通りゃんせ*
- 待ちぼうけ*
- 赤とんぼ
- 里の秋
- この道
- かあさんの歌
- 月の砂漠 -2009Version-
*印は初CD化 ●このCDに歌は入っておりません。


▼都会っ子、ふるさとに出会う
築地生まれの江戸っ子で、家業は築地でかまぼこ屋をやっていました。2歳の時父がミャンマーで戦死、母の手一つで、厳しく、優しく育てられました。母のことは、50歳の時に「泣いたらチンチン切っちゃうぞ」(1991年 いんなぁとりっぷ社)で書いたことがあります。
空襲が激しくなり、甲府に疎開し、空襲で焼け出され、静岡の焼津に移りました。そこで、遊びながら自然に触れ合った思い出があります。都会っ子ですが、“日本のふるさとの風景”を体験しました。抒情歌や童謡、唱歌を演奏する時、“ふるさと”の情景をイメージして演奏できるのもこの辺りにあると思います。
▼古賀メロディは「縁」の歌
何度も語ったことですが、7歳の時に古賀政男ショーのステージを見に行き、そこで阿部保夫先生の「荒城の月」のギター演奏に出会い、ギターの音色と阿部先生が表現された世界に魅了されました。それが阿部門下となりギターを始めたきっかけです。
僕は古賀歌謡学院で阿部先生に基礎からクラシック・ギターを学びました。その阿部先生は後に古賀先生の援助でヨーロッパに留学し、学んだセゴビア奏法を僕に伝授してくれました。セゴビアというのは、当時大衆的な楽器と思われていたギターをクラシックの世界で認めさせた第一人者だったのです。
プロとして、ラテン音楽からスタートして、現在は、古賀メロディ(「月のヴェランダ」「月の浜辺」)、日本の抒情歌(「荒城の月」「月の沙漠」)をメインのレパートリーとしていますが、7歳のギター人生スタートの時が「荒城の月」だったこと、古賀先生、阿部先生との出会いも総てがつながっていると感じます。これが、僕とギター、恩師との強いご縁ですよね。
▼デビュー=モテたい?
年頃になりますと、女性を意識して、モテたいと思うようになります。普通の人はここでギターを始めるのですが、既にギターは8歳で神童といわれた腕前。それに歌をやれば、鬼に金棒というわけです。ちょうどラテンのトリオ・ロス・パンチョスやペレス・プラードが大人気の時代で、性格的にも陽気な僕に合ったラテンの弾語りを始めました。このスタイルがのど自慢で優勝するなど順調に進みまして、プロの音楽家を目指し、阿部先生に連れられて古賀先生に相談に行きました。
はじめ否定的だった古賀先生を翻意させた決め手は、阿部先生がアレンジしたラテン・タッチの古賀メロ「酒は涙か溜息か」「男の純情」を聴いてもらったことです。
それからあっという間に、画期的なLPアルバムでのデビューを果たしました。
▼いつでもラテン・スタイル
今回のCDの収録曲を見ても分かるように、様々なジャンルの曲に挑戦してきました。録音した当時、古賀メロはクラシック的でギターで作曲されているので問題ないけれど、それ以外のジャンルをギターでうまく表現できるか不安はありました。それでもラテンをベースに結構好きにやらせてもらい、今聞いても面白いものが沢山あると思います。
「夜が笑っている」「なみだ船」「別れの一本杉」は僕が選んだ曲で、それぞれ違った面白さがあると思います。

▼思い出深い「悲しい酒」、お気に入りの曲たち
月のテーマ曲はもちろんですが、「影を慕いて」はおふくろと今のかみさんの評価が高くお気に入りです。「悲しい酒」は発売時から、絶対売れると思って色々と根回しをしたり、最初は自分で歌の録音もいたしました。そして自分でその出来の悪さにあきれたという(一同爆笑)、たいへん思い出深い「悲しい歌」です。
▼ひばりさんとの思い出
弟の哲也君とは明治中学時代の悪友で、自宅に遊びにいったり、ギターを聴いてもらったりの思い出があります。ひばりさんの曲は音楽の幅が広く古賀メロのように演奏に合うものが多いと思います。
▼これがギターだ! 「アントニオ古賀」のすべて
僕のギターはセゴビア流の爪弾きで、メロ、リズムと和音、メロをつなぐ旋律と色々な音楽要素を同時に演奏していくもので、ピックでメロディーだけを印象的に弾く歌謡曲ギターとは違います。メロや音質はちょっと地味なところがありますが、これがギターだという魅力はこの全集で十分に味わえると思います。
僕は、ギター演奏の時に曲の背景や状況を考え、そこに自分のこれまでの経験に加えて未来まで色々なことをイメージしています。お客様には、ギターの美しい音色でつむぐ美しい情景をお伝えしたいですから。「おれのギターを聴いてくれ」というそんな強い想いを一曲一曲にこめています。
最後に、このCDには僕の人間性のすべてが現れています。寂しがりや、生真面目、オッチョコチョイ、単純で複雑。そんな人間アントニオがいます。ぜひCDを聴いて、僕アントニオ古賀探しをしてみてください。そんな楽しみに溢れているはずです。
・このインタビューは 『音の楽園 '16年 初夏号 vol.36』に掲載していたものです。