決定盤『名曲喫茶のクラシック』発売によせて-監修者・宮本英世

見るだけでも楽しい「コロムビア・ファミリー・クラブ」のカタログに、またまたユニークな最新版CDアルバムが登場しました。
題して「名曲喫茶のクラシック(全5枚組)」です。数少ないクラシック物の中でも、これこそは万人向き。特にご年配の方々には懐かしさと青春を蘇らせる、常備のアルバムとなるかも知れません。

このCDが企画された訳をわかり易くまとめてみると
1 一般レコード店向きに発売していた同名のCD(2枚組)が好評を得ていること
2 LPの復活を含めて、クラシック音楽の人気が見直されてきていること
3 まだまだ多い「聴かず嫌いの人」に「簡単に親しめる音楽であること」を知ってもらいたい
4 「健康・長生きに効果があること」をお医者さんも認めている(筆者も、長年医者と無縁の生活をしています)
5 学校時代に誰もが耳にした懐かしい名曲をもう一度聴いてもらいたい

─などですが、それでもまだ敬遠する人がいるかも知れませんね。
そういう人にはもっとくだけて「クラシック曲を聴くことのメリット」というのをご紹介しましょうか。
1) ベートーヴェンとかモーツァルトなどと言っていると、すてきな趣味という印象
2) 理屈なしにただ聴くだけでよい
3) 耳を傾けるだけだから気楽だ
4) したがってストレスが溜まらず、病気になり難い
5) 気分転換に最適ないろいろな曲がある。
6) あれこれと想像・空想しながら聴くと、頭が活性化する。
7) したがってアイディアも沸き易くなる
8) 孤独なときにも癒してくれる─などなど。

喫茶「ショパン」

 ところで題名の「名曲喫茶」というのを、憶えていますか。もしかして知らない人もいるかもしれませんね。アルバムの解説書ではご紹介していますが、クラシック音楽を聴かせることを目的とした喫茶店のことで、他にもあった「ジャズ喫茶」「タンゴ喫茶」「シャンソン喫茶」「歌声喫茶」などと共に、1960年頃までの日本では音楽好きを夢中にさせた、代表的な風物詩でした。思い出があり、詳しくご存じのかたもおられるはずですから、興味のある方は、ぜひお聞きにいらしてみて下さい。東京都内にあった懐かしいお店としては「エチュード」「タクト」「ウェスト」(銀座)や、「ウィーン」「丘」(お茶の水)、「ライオン」「らんぶる」「白鳥」(渋谷)、「こんつぇると」「バロック」(吉祥寺)、「ミニヨン」(荻窪)、「ネルケン」(高円寺)、「クラシック」「ベートーヴェン」(中野)、「でんえん」(国分寺)、「スカラ座」「コンサート・ホール」(新宿)、「ショパン」(小川町)、「麦」(本郷三丁目)─などが代表的。(一部のお店は今でも営業しています。)

 なぜそうした店が流行していたかといえば、演奏会もレコードも、びっくりするほど高価だったからです。(大学卒の初任給が約1万円、レコード一枚2500円位)。そんなとき、喫茶店のコーヒー代は一杯60円でした。ゲーム機も携帯電話も無かったあの頃、人々はどれほど真剣に音楽と向き合っていたか、想像するのは容易でしょう。まさにオアシス!それが名曲喫茶だったのです。

 さて、ここに集められた名曲は長い曲に交じって、時折聞こえてきた愛らしく短い曲、いわゆるセミ・クラシック(ホーム・クラシック)の名曲です。例えば「スケーターズ・ワルツ」や「ドナウ河のさざ波」、「月光ソナタ」など、学校時代に、鑑賞曲として誰もが聴いたはずの曲。さらには映画やテレビ・ドラマ、CM等でもしばしば耳にするおなじみの名曲を、ずらりと92曲、演奏陣にも内外で活躍する一流演奏家・楽団を配して集大成したものです。
 とかく「堅苦しい」「難しい」と敬遠されがちなクラシック音楽ですが、これらを聴いたらそんな偏見はいっぺんに吹き飛ぶはず。懐かしい青春が蘇るだけでなく、現在残っている「名曲喫茶」にも、「顔を出してみようか」となるのではないでしょうか。興味を持たれた方は、ぜひ一度お聞きにいらしてみてください。

弟の哲也君とは明治中学時代の悪友で、自宅に遊びにいったり、ギターを聴いてもらったりの思い出があります。ひばりさんの曲は音楽の幅が広く古賀メロのように演奏に合うものが多いと思います。
(宮本英世 名曲喫茶「ショパン」店主)

・この記事は 『音の楽園 '16年 盛夏号 vol.37』に掲載していたものです。

監修者◆宮本英世 プロフィール】
1937年生まれ。東京経済大学経済学部卒。日本コロムビア(洋楽部)、リーダーズ・ダイジェスト(音楽出版部)、トリオ系列会社社長を経て、現在は名曲喫茶「ショパン」(東京・池袋)の経営ならびに、音楽評論・講演・執筆活動などに活躍。著書は『こんな時なにを聴く』(音楽之友社)、『クイズで愉しむクラシック音楽』(講談社)、『喜怒哀楽のクラシック』(集英社)をはじめ約30冊にのぼる。

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