インタビュー

 美空ひばりさんの23回忌を迎え、例年にも増して忙しい日々を送る、ひばりプロダクション代表の加藤和也さん。ひばりさんの息子でもある彼にとって、この22年は「あっという間だった」と振り返る。 「美空ひばりという人は、いつまでたっても人を暇にさせてくれない人なんだなと。毎年第一線で取り上げていただき、小さいお子さんの中にはまだ生きていると思っている方もいて、「ひばりちゃん、これからも元気にうたってください」と応援コメントをいただくこともあって。本当に今でも皆様に生かしてもらってるんだなと感謝しています」


先頃行われた23回忌法要の祭壇。ひばりカラーである紫色の花が印象的です。

 とくに今年は23回忌ということもあり、テレビでの特別番組や百貨店での展示会、記念CDの発売など、さまざまな企画が展開している。そんな企画を立ち上げる時、プロデューサーとして基準にしていることは、ただ1つ。
「おふくろとバアちゃん(故・加藤喜美枝さん)の顔色を伺うことだけですね。この企画だったら、あ、バアちゃんはしかめっ面しているけど、おふくろは大丈夫だなとか、これは2人とも怒っているなとか、2人の顔が頭の中に浮かぶんですよ。家族ゆえかもしれませんけど、2人の性格を細かいところまで知っているので、2人が駄目だという表情をしていることは、やっぱり駄目なんですよね」

 現在も、ひばりさんの意志を尊重している加藤代表。では、母親としてのひばりさんはどんな存在だったのか。
「一緒にいる時間は短かったですけど、怒ると誰よりも恐くて、誰よりもやさしくて、離れていても僕のことをもっとも理解してくれていた人でしたね」

 もっとも長く一緒に過ごせたのは、東京ドームでの不死鳥コンサートを控え、療養と新曲の解釈のためにハワイへ行った時だった。
「僕は自分のバンドのライブを控えていたので行きたくなかったのですが、僕が行かないならハワイへ行かないと言い出しまして、仕方なく一緒に行ったんです。 1カ月近くいましたが、気候がいいから脚もそんなに痛まなかったらしくて、おふくろは毎日、朝早くからバスに乗り、アラモアナとかあちこち出かけてましたね」

 その間、加藤代表はライブに向けてのギター練習で、部屋からほとんど出ない日が続いた。
「帰国する頃には、「あなた真っ白じゃない。どっちが病人かわからないわね」って、おふくろに言われてしまい、「いやいや、おふくろのほうが焼き過ぎだろう」なんて、言い合ってましたね(笑)」

 実は、「おふくろとずっと一緒にいたいと思ってきたけれど、いざ毎日一緒にいられるとなると、どうしていいかわからなかった」のだという。しかし今では、この時間があったことも、心の支えになっている。




「ひばり千夜一夜」は、CD54枚+カラオケDVD+特典CD2枚を収録し、豪華特典が付属。

デビュー曲からカバーまで!待望の”超大型全集”が登場!

 これからも多くの人に、美空ひばりを愛してもらうためには何が必要なのか。長年にわたるファンの方々から、「あの曲は聴けないの?」「この曲が入っていないけど」と、言われることも悩みの種だった。
「昭和24年レコードデビューでしょう。毎年あれだけの曲を出し、カバー曲も含めて1500曲近くもあるとなると、聴いてくださる方も幅広く大勢いらっしゃるので、ヒット曲を好きだという方ばかりではないんですよね」

 できるだけ多くのファンの要望に応えたい。その結果、ついに今年の8月に発売されることになったのが『美空ひばり23回忌 特別企画 ひばり千夜一夜』である。シングル・コレクションにカバー・コレクション、さらにオリジナル曲などを集めた1001曲が楽しめるCD集になっている。
「皆さんのリクエストにすべて応えられるとすると、こういう企画に尽きるんじゃないかと思います。永久保存版として、末永く楽しんでいただけると思います」

 また、代表自身が何よりうれしかったのは、特典CDとして『おしどり・イン・ザ・ナイト』が入っていること。
「うちのおやじ(故・小野透)がビートルズをうたっていたり、おふくろが洋楽をうたっていたり。おふくろが人のためではなく、自分のために心から楽しんで、兄弟と一緒にうたっている貴重な1枚なんです」

 まさに、歌手・美空ひばりの魂の軌跡ともいえる、この大全集。
「どれもおふくろが骨身を削ってうたった楽曲ですから、一人でも多くの方に聴いていただけるとうれしいですね。『河童ブギウギ』や『津軽のふるさと』など、当時の音源を使っているので、そこにこそ血の通った、昭和の時代が集約されているように思います。ひばりと共に歩んでくださったファンの方々には当時を振り返りながら、この機会に若い方にも手にとって、聴いていただけることを願っています」

完全版ではこんなエピソードも……
●プロデューサーとして見た美空ひばり
 今もなお現役の歌手として活躍する美空ひばりを、プロデューサーの視点から語る。
●大好きな"おふくろ"との思い出
 自宅に招いた仮面ライダーショー、ひばりの遺した手紙など……語り尽くせない思い出の数々。

加藤和也

加藤和也 プロフィール

(株)ひばりプロダクション代表取締役社長。
美空ひばりの弟・かとう哲也の長男として生まれ、幼少の頃より美空ひぱりと生活を共にし、7歳の時に養子縁組をして親子となる。
16歳の時にひばりプロダクションの副社長に就任し、美空ひばりの晩年を支える。
美空ひばり亡きあと音楽プロデューサーを志し、ブルースシンガーの大木トオル氏に師事。
現在は、社長としてさまざまなイベントをプロデュースしている。